秋の会津美里のまちを歩いていると、鮮やかな橙色がいつも目に飛び込んできます。「家々には柿と梅が植えられている」と、まちの人が教えてくれた通り、どこに視線をやっても、たわわに実った”みしらず柿”が「秋だよ〜」と教えてくれるのです。

そして軒先には、まるでのれんのようにブラブラと風に揺れる干し柿。ほんのり茶色をおびた橙色が秋らしい風情を漂わせ、思わず写真を撮りたくなる風景です。

まちの人にとって何気ない、”いつもの風景”が、旅人にとっては「こんな光景見たことない!」と、心を奪われることが多々あります。

世にも珍しい絶景も、確かに人を惹きつけますが、人や風景からそっと聞こえる”はじめまして”に耳を傾けることが旅の醍醐味のひとつでもあり、「ここに来て良かった」と思える瞬間でもあるのです。

山を染める赤色

撮影スポットのひとつになっていた、山肌に広がるりんご畑。ほんのり雪をかぶった磐梯山に青空、りんごの赤色が美しいコントラストを生み出していました。

近くの畑で、贈答用の立派なりんごでいっぱいのカゴを、珍しげにジロジロと見ていると「採ってみなんしょ!」と、収穫作業中だったお母さん。

お母さん指導のもと、まるまるとしたりんご(サンフジ)を、そっと手でくるんで、くいっと手首を返すと、パリッという音とともに、芯の上から気持ちいいくらいキレイにりんごが枝から離れる――。

「おぉ! りんごってこんなふうに採れるの!?」

りんごは食べる専門で、収穫などしたことがない都会っ子だらけの撮影スタッフ。新鮮な体験に、カメラマンが撮影中なのを良いことに、次から次へとりんごの収穫を手伝わせていただいたのでした。

秋の橙色、赤色の景色といえば、一般的には「紅葉」のイメージがありますが、ここ会津美里では「柿」と「りんご」の色なのです。

磁器と雲海の薄灰青色

会津本郷エリアといえば、焼き物。ということで、草春窯「工房 爽」を営む田崎 宏さんのもとへ。田崎さんは会社員から陶芸の道に入り、今では福島県内のみならず、新潟や秋田、東京でも毎年精力的に個展を行っています。

田崎さんの磁器作品の特長は、思わず触りたくなる有機的なかたち。実際に持っていみると、手に吸い付くようにすっと馴染むのが不思議です。

「この薄灰青色がキレイ……」。思わず声を漏らすと、「雪が降って光があたると青っぽく見えて美しいです。この色は”会津の雪の色”なのかもしれませんね」と、田崎さん。

夏の夜には周囲をホタルが舞うという工房は、塀などの遮るものがなく、道ばたからひょっこり覗きたくなる佇まい。「敷地に勝手に入ると、怒られたりしますか?」の質問には、「いえいえ、大丈夫ですよ(笑)。気軽に覗きに来てください」とにっこり。(草春窯「工房 爽」では3,000円+送料で器をひとり2個つくれる制作体験(5名まで)も出来るそう!)

ぐっと気温が冷え込み、冬の気配を感じた翌朝。宿泊していた宿から見えた雲海は、田崎さんの器に似た薄灰青色でした。

 

文・写真=小西七重