2017年から始まった『会津美里町 まちの編集室』は、会津美里町情報発信人材育成の取り組みとして、「発信をする人を増やす」ことを目的として開催しているプロジェクト。座学で学ぶセミナーと町民参加型のワークショップの二部構成で進みます。

第1回目のゲストは、NPO法人アースキューブジャパン代表理事の中村功芳さん。“誰も来ない”とされていた場所にゲストハウスをつくり、時間をかけてメッセージを発信し続け、今では世界中から人が訪れる場所に育ちました。中村さんならではの地域の魅力を伝える方法とは?

発信する仲間を集める

 

中村さんは、ゲストハウスの存在がまだあまり知られていなかった2010年に、地域住民と一緒に旅人をもてなすゲストハウス「有鄰庵(ゆうりんあん)」を岡山県倉敷市に開業しました。

倉敷といえば観光地のイメージですが、中村さんが選んだのは1時間に3組しか人が通らない、地元の人から「あそこで宿は無理」と言われるような場所でした。

「オープンして半年間はお客さんが2組だけの月もありましたね。当時はFacebookがようやく出始めた頃で、僕自身が『いいな』と思うこの地域の魅力をブログで毎日発信していました。この通りには何もないけれど、少し広く見れば周辺には魅力的な地域がたくさんある。むしろその状態をフックにしたスタイルで発信ができたらと、倉敷から2時間以内で行ける範囲の場所で宿を運営する仲間と連携して、お客さんにお互いの宿を紹介し合うことにしたんです」

地域の魅力を広域で捉え、仲間の宿と連携することで発信力を高めて、新しい導線を描く。その結果、「有鄰庵」は52カ国以上から旅行客が訪れる人気の宿になりました。

その土地の風土を生かす

 

現在、中村さんは全国でゲストハウスの立ち上げをサポートしています。そこで意識するべきだと伝えているのは、「その土地の風土を生かす」ことなのだそう。

例えば、岡山県早島町は400年前から畳の原料であるイグサの生産が盛んに行われていた地域で、「早島おもて」という畳表は全国でも高い評価を受けていました。しかし、生活様式の変化で生産が途絶えたことを聞いた中村さんは、地域の仲間とともに農作業を体験できるゲストハウスをつくり、そこでイグサ生産の復活に取り組むプランを立てることにしたのです。

「まずはイグサのことを知ってもらうために、アメリカで日本の伝統文化を研究している教授に手紙を送ったんです。すると、『そんな伝統文化があったなんて知らなかった!』と現地まで来てくれました」

その教授によって、早島町のイグサは海外へ発信されることに。まちに来てほしい人を想定し、具体的なアクションを起こす。外から来た専門家がイグサを評価したことで、地域に新たな価値が生まれました。

まちをひとつの宿に見立てる

 

「地域にはそれぞれに暮らしの豊かさがある」という中村さん。その暮らしの豊かさをゲストハウスに取り入れ、持続可能な地域経営のモデルとして実現させたのが「地域まるごと宿」です。

「地域まるごと宿」は、まちの空き家をゲストハウスとして活用して地域内に飲食を始めとしたサービスを機能を分散させて、まち全体を宿と見立て観光客を迎える仕組みのこと。旅人がまちを巡ることで地域内にお金が循環し、旅人は地域の日常の暮らしに入り込むことができるという形です。

広域で捉えてエリアの魅力を発信することと、発信する仲間を集めること。さらに、「宿」自体をメディアとして捉え、宿泊を通じて地域の魅力を伝えるのが中村さんの手法です。中村さんの実践して来た道には、発信力を高めるために参考にしたいヒントがいくつもありました。

文:原山幸恵(tarakusa)